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モナシュ大学による研究報告

モナシュ大学 神経科学科チームが健康な人とビジュアルスノウ症候群(視界砂嵐症候群)患者の重要な違いを明らかにし、いくつかの原因を特定をしました。

・当研究の簡易まとめ
今までは眼球運動の研究において、VSS患者と健康な人の眼球運動の違いを発見できていませんでした。しかし今回の研究により、その違いを発見できました。

今回のような発見(情報)が、ビジュアルスノウ症候群に対する的を絞った治療法の開発に役立つとのことです。

ビジュアルスノウ症候群患者と健康な人との違い

モナシュ大学 神経科学科チームが、健康な人とVS患者の重要な違いを明らかにし、いくつかの原因を特定。(2020年9月9日発表)

ビジュアルスノウ症候群患者(以後VSS患者と表示)における脳内の眼球運動ネットワークに客観的な機能変化があることを研究チームが初めて確認できました。

※備考
「ネットワーク」という言葉は、神経学の専門用語です。脳の各部位は個別に活動をしているのではなく、複数の部位が互いに影響を与えあって活動をしている、という概念です。

眼球運動ネットワークのイメージ画像はこちら。赤線・黄色線・黒点の箇所です。

the journal Neurology(国際医学雑誌)に掲載された最近の研究により、客観テスト(採点者の主観に左右されず、機械的に採点できる形式のテスト)によって測定される眼球運動ネットワークの処理速度と処理エラーにおいて、VSS患者と健康な人に違いがあることが明らかになりました。

ビジュアルスノウ症候群患者の眼球運動を観察するなかで見えたもの

セントラルクリニカルスクール(モナシュ大学研究機関) の神経学科准教授Joanne Fielding(ジョーン・フィールディング)がこの研究の指揮をとりました。

研究では眼球運動のコントロールをしている「脳内の眼球運動ネットワーク」に、3つの異なる眼球運動のタスクを与えました。この研究により、視覚処理のどの段階に影響を与えているのかを特定することができました。

Ms Emma Solly, PhD student(大学院博士課程学生のエマ・ソリー)とDr Meaghan Clough( 博士後研究員のミーガン・クラウ)は、研究に参加したVSS患者の方々と一緒に研究に取り組みました。

この研究では、VSS患者の眼球運動と健康な人達の眼球運動の違いを比較しました。筆頭著者(研究責任者)のフィールディング准教授は次のように述べています。

眼球運動ネットワークとその視覚情報の処理は複雑であり、人が物を見るまでには、複雑な段階を踏んでいます。

そのネットワークは、脳の複数の領域を含んでいます。それらの領域は、眼から脳へ視覚情報を送ることにおいて関係がある領域です。

またそのネットワークは、まとまりのある画像を作るために認知プロセスを使い、視覚情報をとりまとめます。そして最終的に眼球運動が生じます。

今研究により”VSS患者における客観的かつ定量化(状態を数値化)可能な機能変化”が認められることについての、最初の証拠がもたらされました。

チームはVSSの患者が突然現れる刺激に向かって健康な患者よりも速く目を動かしたことを発見したのです。

さらに、その動作を止め、代わりに目を反対方向に動かすように求められた場合、VSS患者は目を刺激に向けて誤って動かしてしまう傾向が強いことがわかりました。

興味深いことにこれらの各タスクの難易度が増し、脳内での個人の高次視覚処理に対する要求(負荷)が高まった場合であっても、結果に違いはありませんでした。

VSS患者は依然としてより速い眼球運動で反応し、誤った眼球運動の割合は変化しませんでした。

・備考
高次視覚処理とは「一次視覚野で行われる知覚視覚処理よりも複雑な視覚情報が用いられた認知操作のこと」ですが、専門性が高い内容のため、私自身理解が追い付いていません。

フィールディング准教授は今回の研究結果を受けて次のように考えています。

VSSのある人では、視覚処理の変化が脳の意思決定センター(思考や選択をつかさどる前頭葉)の混乱の結果ではないことを、これらの結果が示唆しています。

むしろ、VSSの患者は、健康な人よりも速く視覚刺激を処理しているように思われ、それが眼球運動の加速を引き起こしていると考えられます。

VSSの行動特徴(視覚処理が速いこと)を決定づけたり、脳の領域と影響を受けるプロセスを特定したりする上での重要な最初のステップが今回の分析によりもたらされました。

この衰弱性の(精神を疲弊させる)症候群に対する、より良い管理の仕方や的を絞った治療法の開発において、今回のような情報が役立ちます。(終わり)

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